理学療法士(昭和医科大学・目白大学)

大学卒業後、夢をかなえリハビリ職の専門家として活躍中の先輩や、現在、リハビリ職をめざして大学で学んでいる在校生にインタビュー。仕事のやりがいや、この進路を選んだ理由、学校選びのポイントなどをうかがいました。「先輩たち」の生の声を進路選びの参考にしてください。
リハビリ職の夢をかなえた社会人インタビュー 理学療法士編

理学療法士としてキャリアを重ねながら、
大学院へ進学
専門性を高め、研究者としても活躍の場を広げる
昭和医科大学
保健医療学部リハビリテーション学科
理学療法学専攻(2015年3月卒業)
(令和5年より理学療法学科より改組)
昭和医科大学スポーツ運動科学研究所・
藤が丘リハビリテーション病院勤務
阿蘇 卓也 先輩
高校1年生で肘の手術とリハビリテーションを経験
4学部連携の学びで理学療法士をめざす
高校1年生の12月、野球部の活動中に肘を痛め、剥がれた軟骨を膝から移植する手術が必要になりました。手術は成功し、2〜3週間の入院とリハビリテーションを経て無事に野球を続けることができましたが、患者の立場になって、手術をひかえた不安やリハビリテーションの大変さを痛感し、将来の仕事を考えるきっかけとなりました。
高校3年生の進路選択で、その時の入院やリハビリテーションの経験を振り返り、「人を支える仕事に就きたい」と考えるようになりました。母が看護師をしていたので医療職がハードなことは理解していましたが、理学療法士はその中でもワークライフバランスが取りやすいと感じました。また、医療現場での信頼性や社会的な評価が高いこと、職業としての安定性があることも魅力に感じ、挑戦しようと決意しました。
昭和医科大学を選んだ理由は、医学部・歯学部・薬学部・保健医療学部の4学部が連携した医系総合大学であるという点からです。幅広い視野を持って学べる環境が整っており、なかでも1年次の富士吉田での寮生活は他学部との交流を深める良い機会でした。私は医学部・歯学部・薬学部の学生が一人ずついる4人部屋で生活しました。勉強の話だけでなくプライベートな話や雑談で盛り上がり、お互い刺激を受けながら頑張った日々が懐かしいです。同期との横のつながりは今でも続いており、病院ですれ違うと「元気か」と声をかける間柄です。
臨機応変な対応が求められる実習
教授や先輩のサポートで安心して取り組めた
大学での学びは、医療やリハビリテーションにまつわる知識が膨大で、とにかく勉強の毎日でした。実習が始まると、教科書通りにいかない場面も多く、臨機応変な対応が求められる大変さがありました。実際のリハビリテーションでは、患者の症状に応じて進め方はもちろん、コミュニケーションの取り方も変えなければなりません。たとえば、脳卒中などで言葉が出にくい患者さんには、難しい言葉で長々と説明するよりも、あえて言葉の数を減らして簡潔に説明したり、平易な言葉に言い換えたりすることでコミュニケーションが取りやすくなることもあります。その場の判断や患者とのコミュニケーションの重要性を学び、座学で身につけた知識をどう活かすか試される瞬間も多くありました。しかし、昭和医科大学は教員との距離が近く、先輩の理学療法士が学生一人ひとりについてくださるため、不安があっても心強いサポートが得られました。
国家試験対策では、模擬試験や国家試験対策の参考書を活用し、自分に不足している分野を補いながら進めました。同じ学科の仲間と集まって勉強会を開くこともあり、皆で同じ目標に向かって頑張れることが励みになりました。


リハビリテーションを担当した高校生が
「理学療法士をめざす」と言ってくれた
理学療法士になって5年目の冬、バスケットボール部に所属する高校2年生の患者さんのリハビリテーションを担当しました。断裂した膝靭帯の再建手術を予定していたため、通常であれば競技復帰には10カ月ほど掛かりますが、患者さんにはおよそ半年後にある引退試合に出たいという強い希望がありました。そこで手術方法を変更し、早いペースでのリハビリテーション計画を立てることで早期回復をめざしました。その試みは見事に成功し、無事に最後の試合に間に合わせることができました。リハビリテーションが終わった後にも病院までお礼を伝えに来てくれて、そのときには「自分も理学療法士をめざします」とまで言ってくれました。とても嬉しく、心に残る瞬間でしたね。私たち理学療法士の仕事は、患者が日常生活に戻るためのサポートであり、リハビリテーションを通じて患者の目標達成を手助けできることが何よりの喜びだと実感しました。
その一方、患者が希望する回復レベルと実際の回復見込みが食い違うときにはこの仕事の難しさを感じます。丁寧に説明を重ね、理解していただけるよう心がけていますが、時には整形外科の医師と連携し、医師から症状を説明してもらうこともあります。患者にとって医師からの言葉は非常に重く、納得する理由になるので、患者に最適なケアをするために医師とのコンタクトは欠かせません。本学の特色でもあるチーム医療はこういった場面でも生かされており、全員でリハビリテーションのゴールを見定めていくようにしています。

日本体育大学との共同研究に参加
研究での学びを臨床現場で役立てたい
藤が丘リハビリテーション病院に勤務して3~4年経ったころから、理学療法士としてキャリアを積む中で、さらに専門性を高める知識や技術を得たいと考え、大学院に進学しました。肩や肘の機能について研究を進めており、野球の経験を活かして「連続投球が体に与える影響」をテーマに博士号を取得しました。
現在は、本病院に通院する患者のリハビリテーションを担当しつつ、4月から配属された昭和医科大学スポーツ運動科学研究所で、日本体育大学との共同研究を行っています。ラグビー部やアメリカンフットボール部の学生のメディカルチェックを担当し、上肢の障がいに関連する筋力や柔軟性のデータを収集・解析しています。研究と臨床が互いに良い影響を与え合い、新しい学びが得られる環境で働けることは、大きなやりがいです。選手のケガをなくすことを最終目標に予防医療や再発防止の方法を追究し、社会の役に立てるよう努めていきたいです。
リハビリ職をめざす高校生の皆さんには、英語力をつけることと、コミュニケーションスキルを磨くことをぜひ頑張ってほしいです。建学の精神「至誠一貫」にもある通り、医療職とは常に相手の立場に立ってまごころを尽くす職業です。そのためにも自分の考えを伝える力や相手の気持ちを汲み取る力は欠かせません。理学療法士は、一人の患者と向き合う大変さもありますが、回復をサポートできる楽しさや自分自身の成長も感じられる仕事だと思います。自分の可能性を信じてチャレンジしてみてください。
1日のタイムスケジュール
8:30 出勤
9:00 データ解析、論文執筆、患者のリハビリテーション
一人の患者を継続で受け持つため、担当患者のリハビリテーションがあるときは事前にカルテを確認します。
効果測定や今後のリハビリテーション計画のために、医学的情報が必要な時は文献を見ることも多いです。
休憩
13:00 データ解析、論文執筆、患者のリハビリテーション
普段の業務ではデータ解析や論文執筆などの研究関連に比重を置いています。
土曜の午後には日本体育大学にデータ収集のため向かうこともあります。
夕方の時間帯には打ち合わせや会議が入ることもあります。
17:00 退勤
勤務先

医系総合大学(医科、歯科、薬科、保健医療)の特徴を生かし、スポーツ運動科学、健康科学に関する研究および教育を行っている。
昭和医科大学 保健医療学部 リハビリテーション学科

住所:〒226-8555 神奈川県横浜市緑区十日市場町1865
電話番号:045-985-6500(代表)
募集定員:理学療法学専攻 35名/作業療法学専攻 25名
リハビリ職の夢をかなえた社会人インタビュー
理学療法士編

理学療法士として東京2020空手競技を支える
広い視野と高い専門性を武器に、プロ野球選手らの治療に従事
目白大学
保健医療学部
理学療法学科(2009年3月卒業)
(医)野球医学 ベースボール&スポーツクリニック勤務 安東 映美先輩
中学生の頃から理学療法士をめざしていた
クラスメイトと絆を育み、切磋琢磨して成長
中学生の頃、バスケットボール部で活動中に腰椎分離症になり、整形外科を受診しました。そのとき体のケアをしてくれた鍼灸師さんが、体の仕組みや働きについて詳しく教えてくれ、その話がとても面白くて、人の健康や体に関わる仕事に興味を持ち始めたんです。そこから、大好きなスポーツに関わる仕事、特にオリンピックやパラリンピックの現場で、選手をサポートする立場になりたいと考えるようになり、理学療法士をめざすようになりました。
目白大学を選んだのは、オープンキャンパスで感じた雰囲気でした。自然が豊かで開放感があり、初めて訪れたときから「ここなら安心して学べそうだな」と感じたんです。都内の大学もいくつか見学しましたが、広すぎて圧倒されてしまいました。この学校は自然と調和しながらも程よい規模感で、心が穏やかになるような場所だと思いました。
私は1期生として入学しました。すべてが手探りのスタートだからこそ新鮮で、ワクワクしていました。4年間、50人のクラスメイトと一緒に学んだので、高校の延長のような形で、楽しかったですね。必修科目が多かったし、クラス替えもなかったので全員が顔見知りになり、自然と仲間意識が生まれました。今でもそのつながりは続いていて、仕事の現場や日常で情報交換をしたり、お互いに助け合える関係が続いています。
親身になってくれる先生に全幅の信頼を寄せる
「スポーツサポーティング研究部」はうらやましい
目白大学の魅力は、先生がとても親しみやすいところです。授業が終わると担任の先生の研究室に行って、いろいろおしゃべりをしたり、勉強について相談したりしていました。1期生だったので、就職や実習、勉強方法など、頼れる先輩がいなかったんです。診療や試験対策で使える参考書についても先生に聞くため、毎日のように研究室に通っていました。
実習中も先生の存在に何度も助けられました。授業で学生同士の練習はスムーズにできていたのに、患者さんを前にするとうまくいきません。指示が伝わらず焦ってしまい、「どうすればいいんだろう」と悩んでばかりでした。課題の量も多く、辛くてたまらなかったとき、先生が視察に来てくださいました。先生の顔を見ると、張り詰めていた気持ちが一気に緩んで、泣いてしまいました。先生の存在にどれほど支えられていたか、改めて実感しました。
今は「スポーツサポーティング研究部」があるんですよね。全日本空手道連盟のサポートで目白大学の工藤先生(保健医療学部 理学療法学科 学科長)とご一緒していると、合宿にサポーティング部の学生さんが来て、アイシングやコンディショニングのサポートをしてくれるんです。私が学生の頃にこんな機会があったら、絶対に入りたかったなと思います。代表チームの合宿に帯同できるなんて、スポーツの現場を間近で見られる貴重な経験ですし、本当に羨ましいですね。


東京オリンピックの空手競技をトレーナーとしてサポート
メダル獲得の瞬間は忘れられない感動
卒業後は、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションの現場で経験を積みながら、日本スポーツ協会アスレティックトレーナーや認定理学療法士(スポーツ)の資格を取得し、学会発表などにも取り組んできました。
中でも印象に残っているのは、2021年の東京オリンピックに空手競技のトレーナーとして帯同したことです。選手のウォーミングアップやリカバリーマッサージ、時差ボケの調整など、試合当日に最高の状態で臨めるようサポートしました。試合前の緊張感や、選手の体調を一つ一つ確認しながらサポートする時間には、トレーナーとしての責任の重さを痛感しました。日本はこの大会で3つのメダルを獲得しましたが、メダルが確定した瞬間、その場の空気が一変し、涙を流す選手やスタッフの姿に胸が熱くなりました。選手は4年間、メダル獲得のためにすべてをかけて挑戦します。その過程を間近で見てきたからこそ、言葉にできないほどの感動がありました。選手が私を信じて任せてくれるからこそ、全力で応えたい。その思いで過ごした日々は、理学療法士としてのやりがいと誇りにつながりました。
現在勤務しているクリニックでは、オリンピック帯同経験などが評価され、トップアスリートやプロ野球選手の治療やコンディショニングを多く担当しています。国内トップレベルの選手にはドーピング検査もあるため、ドクターとの連携や相談を受ける場面も多く、治療方針の確認や注射などの対応にも関わっています。
施術で心がけているのは、何よりも結果にこだわることです。痛みを抱えている人が目の前にいる限り、それを取り除くために全力を尽くします。たとえ難しい状況でも、最適な代替案を見つけ出し、必ず前に進む道を示したいと考えています。

高校生の皆さんには、スポーツ理学療法の
分野にも果敢に挑戦してほしい
現在は産休中ですが、復帰後は今の仕事に加え、妊娠や出産を経ても女性アスリートが競技に復帰できるサポートや、仕事をする女性がキャリアを諦めなくてもすむような体のメンテナンスサポートに力を入れたいと考えています。自身が妊娠・出産を経験し、その大変さや体への負担、キャリアとの両立の難しさを改めて実感しました。だからこそ、スポーツ分野や働く女性全体に目を向け、ライフイベントを経ても自分らしく進んでいける環境を整えたいと考えています。
スポーツ理学療法の分野では、スクールトレーナー制度が広がり、学校や地域の活動でも理学療法士がスポーツに関わる機会が増えています。プロチームだけでなく、行動力があれば幅広い場所で自分の力を発揮できます。これから理学療法士をめざす皆さんには、自分の興味や強みを大切にして、一歩ずつ挑戦してほしいです。
1日のタイムスケジュール
8:30 出勤
クリニック内の掃除やリハビリテーションの準備 患者のリハビリテーションに備えたカルテ確認やスケジュール確認
9:00 午前のリハビリテーション開始
1人40分のリハビリテーションを6人担当(小中学生からアスリートまで)
休憩
15:00 午後のリハビリテーション開始
午前と同様、1人40分のリハビリテーションを6人担当 患者の状態に合わせて治療やコンディショニングを行う
19:00 リハビリテーション終了・片付け
資料をもとにして、最新の医学情報を共有します。場合によっては英語の文献を使用します。
19:30 退勤
※現在は育休中ですが、復帰後は保育園や家族のサポートを受けながら、院長と相談しつつ時短勤務を予定しています 。
勤務先

当院は、野球をはじめとする様々な競技の現場復帰までサポートしています。
目白大学 保健医療学部 理学療法学科

住所:〒339-8501 埼玉県さいたま市岩槻区浮谷320
電話番号:048-797-2222(入試課)
募集定員:理学療法学科 85名/作業療法学科 60名/言語聴覚学科 40名