作業療法士(国際医療福祉大学・昭和医科大学)

大学卒業後、夢をかなえリハビリ職の専門家として活躍中の先輩や、現在、リハビリ職をめざして大学で学んでいる在校生にインタビュー。仕事のやりがいや、この進路を選んだ理由、学校選びのポイントなどをうかがいました。 「先輩たち」の生の声を進路選びの参考にしてください。
リハビリ職の夢をかなえた社会人インタビュー 作業療法士編

幅広い領域で活躍できる可能性を秘めた職業
患者の個性を尊重したリハビリを提供していきたい
国際医療福祉大学
小田原保健医療学部
作業療法学科(2022年3月卒業)
国際医療福祉大学熱海病院 リハビリテーション部勤務 大津 みいな先輩
就労や趣味活動もサポート
多彩な仕事内容が作業療法士の魅力
「リハビリテーション」にはどのようなイメージを持っていますか?以前の私は、ケガや病気で歩けなくなった患者が運動機能を取り戻すために行う治療のことだと思っていました。しかし、祖母が足を悪くして入院したことをきっかけに、リハビリテーションは食事・更衣・トイレ動作など日常生活のさまざまな作業や、就労支援、趣味活動にまでおよぶことを知り、中でも作業療法士の仕事に興味を持ちました。
作業療法士が理学療法士と異なるのは、目に見える身体機能回復だけでなく、心の健康回復につながるサポートも行う点です。専門性が高く、1つの資格で患者の生活を幅広く支援できること、高齢化の進行に伴い注目度の高い職業であることなど、多くの魅力があることに気づきました。
作業療法士をめざす私が、この大学を進学先に選んだ一番の理由は、国家試験合格率や就職率の高さです。国家試験対策講座や個別指導、模擬試験などきめ細やかなサポートがあり、合格率は全国トップクラス。私が卒業した2022年は、作業療法士国家試験を受験した全員が合格しました。国家試験直前には先生と後輩が壮行会を開催してくださり、後輩たちが考えた面白い企画や、先生方からの歌のプレゼント、応援メッセージに励まされ、勉強ばかりで辛くなっていた気持ちが明るくなりました。作業療法学科は1学年40人の少人数制ということもあり、アットホームで、先生方に気軽に相談できる雰囲気が良いところだと思います。
大学では多くのことを座学や実習で学びましたが、特に印象に残っているのは「総合実習」です。病院や施設の利用者に、今の身体の状態や普段はどのような生活環境にあるかについて情報収集し、リハビリテーションのメニューを立てることから始めました。学内での座学や実技だけでは得難い貴重な経験となり、作業療法士の仕事のイメージがより明確になりました。患者一人ひとりの症状、治療への考え方、回復後の生活は大きく異なります。同じ作業を訓練するときでも、サポートの仕方が異なることをこの実習の中で学びました。
急性期病棟で奮闘する日々
大切なのは臨機応変な対応
2022年3月に大学を卒業し、長期実習でお世話になった国際医療福祉大学熱海病院リハビリテーション部に就職しました。働く前から職場の環境を知っていたので、大きな不安を感じることなく、社会人生活をスタートすることができました。また、定期的に大学の先生方が訪問されているので、一緒に患者を診てもらうことがあります。卒業後も指導を受けることができて、大変心強いです。
現在は急性期病棟で、脳卒中で後遺症のある患者、整形外科の患者、呼吸器・消化器に疾患のある患者のリハビリテーションを担当しています。この病棟は病気を発症したばかりの患者がほとんどなので、リスク管理をしながら治療と並行してリハビリテーションを行うことが必要です。寝たきりの方、歩く・座るといった簡単な動作はできても、日常生活に不便を感じている方もいらっしゃいます。その日ごとに患者の状態やリハビリテーションの目標も異なるため、患者の身体と心に寄り添いながら、臨機応変な治療を行うことが何よりも大切だと考えています。そのため、医師や看護師など他職種のスタッフと定期的にカンファレンスを行い、情報を共有しながら治療の方向性を決めるようにしています。


患者の回復が大きな喜び
専門分野を見つけることが今後の目標
仕事ではまだまだ悩む場面が多いです。急変のリスクが高い方や身体に点滴やドレーンなどの治療器具を常時つけている方も多く、リスクを考慮しながらリハビリテーションをしなければなりません。また、患者やそのご家族の希望と見込まれる回復状態が乖離した際、どのように目標を設定すれば良いか、難しい判断を迫られることもあります。患者それぞれの価値観が違うことを心に留めて、最適なリハビリテーションを提供したいと思っています。作業療法士が中心となって患者ができない動作をすべてできるようにしようとするのではなく、あくまで患者を中心に考え、生活するうえでどのようなことに困っているのか、どの作業に重きをおいているのかを考慮し、サポートできるような作業療法士になりたいです。
そんな無我夢中の毎日ですが、患者のできる作業が増えたり、寝たきりだった患者の自分一人でできる生活動作が増えてきたり、良い変化を目の当たりにしたときに、やりがいを感じます。また、患者から直接感謝の言葉をいただけたときは、とてもうれしいです。これからの目標は、自分の得意分野や興味のある分野を見いだし、その分野のプロフェッショナルとなれるように作業療法の質を向上させることです。そして、急性期病棟で働く中でさまざまな病態を経験し、技術や知識の幅を広げていきたいと思っています。

文系・理系にこだわらずに進路選択を!
本当に自分のめざしたい道を進もう
これから自分の進路を選ぶ皆さんは、理系・文系などの枠組みで職種を選ぶことも多いと思います。しかし、「自分の本当にめざしたい道」を選んでほしいです。作業療法士に限って言えば、理系・文系の枠を越えて一から勉強する内容が多いので、どちらの知識も必要になります。
作業療法士は身体障がい、精神疾患、発達障がい、老年期など、幅広い分野で活躍ができる可能性を秘めた職種です。領域が広い分、学ぶことが多くて大変ですが、得られる知識、患者や他職種のスタッフとの関わりを通して身につくこと、仕事のやりがいはとても大きいです。誰かの役に立ちたい、生活を支える仕事に就きたいという気持ちがあるなら、ぜひ作業療法士をめざしてみてください。
1日のタイムスケジュール
8:30 出勤、カルテ確認、朝礼
勤務するリハビリテーション部には医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士なども所属。それぞれ担当患者のカルテ確認、朝礼などを行います。
9:00 午前のリハビリテーションを開始
作業療法では病気の進行に合わせて、障がいのある部分だけでなく、健康な部分も最大限に活用してリハビリテーションを行っています。
休憩
13:00 午後のリハビリテーションを開始
作品づくりや趣味活動で心へ働きかけたり、日常生活に必要な動作を訓練したり、患者一人ひとりに寄り添ったリハビリテーションを実践しています。
17:00 カルテ記載、カンファレンス
最適なリハビリテーションを実践するためには、スタッフ同士の連携が大切。リハビリテーションの進め方について相談することもあります。
17:30 終業
勤務先

国際医療福祉大学熱海病院のリハビリテーション室です。ここで毎日患者のケアを行います。検査・評価やリハビリテーションに必要な設備が整っています。
国際医療福祉大学 小田原保健医療学部 作業療法学科

住所:〒250-8588 神奈川県小田原市城山1-2-25(本校舎)
〒250-0013 神奈川県小田原市南町1-6-34(城内校舎)
電話番号:0465-21-0361(入試事務室)
募集定員:作業療法学科
40名/理学療法学科 80名
リハビリ職の夢をかなえた社会人インタビュー 作業療法士編

患者が身体機能や生きがいを取り戻す過程に寄り添いながら、
学生たちへの指導にも力を入れています
昭和医科大学
保健医療学部
リハビリテーション学科
作業療法学専攻(2010年3月卒業)
(令和5年より理学療法学科から改組)
保健医療学部・昭和医科大学病院勤務
齋藤 甚先輩
作業療法士は自分の興味を活かせる仕事
患者との関わりも魅力の一つ
作業療法士の仕事を知ったのは高校2年生のときです。高校の授業では生物科目が好きで、人体に関する単元に興味があったことから、漠然と医療職をめざすようになりました。作業療法士をめざすと決めたのは、患者一人ひとりと密に関わりが持てる点に惹かれたからです。人と関わることも好きだったので、楽しそうな職業だと率直に感じました。
医療の中でもリハビリテーションの分野に注目したのは、部活動でサッカーをしていた経験も影響があるかもしれません。スポーツはケガと隣り合わせで、周囲の仲間がケガや故障に見舞われたこともありました。自分の興味と経験から作業療法士の仕事に自然と関心が向いたのだと思います。
昭和医科大学を選んだ理由は、カリキュラムに医療全般に関わる多様な講義が組み込まれており、作業療法の専門知識だけでなく、他学部との連携を通じて、幅広い視点を学べるからです。附属病院との連携が強く、講義で学んだ内容を病院での実習に活かせる環境も魅力的でした。実際に、1年次の寮生活では想像以上に他学部の学生と交流があり、医系総合大学ならではのメリットをさまざまに享受できました。また、フットサルサークルに所属したことで友人もさらに増え、楽しく充実した学生生活を送ることができました。
学生時代は経験を積むことが重要
大学での学びが今に生きていると実感
作業療法関連の講義は専門性が高く、覚えなければならないこともたくさんで、講義についていくのに一生懸命でした。しかし、卒業後に臨床現場で患者と接するときにも、大学で講師として学生たちを指導するときにも、学生時代に身につけた知識やスキルが活かされています。大変なことも多かったですが、大学での勉強を頑張ってよかったと思いますし、学生たちにも精一杯、講義や実習に取り組んでほしいと思っています。
2年次から始まる実習では、附属病院で作業療法士の先生と患者がリハビリテーションを行う様子を見学したり、先生の指導のもと患者の訓練をサポートしたりしました。実習の思い出を振り返ると、リハビリテーションが教科書通りにうまくいくことはなかなかありませんでした。達成感や成功体験を得られることは少なく、むしろ、何度も失敗しては悩み、できることを少しずつ増やしていく日々の繰り返し。患者や症例はさまざまなので、経験をとにかく積んで、将来に活かそうという気概で臨んでいました。実習を通じて色々な経験ができたことが、働き始めてからの成長につながったと感じています。学生のうちはうまくできなくても当然なので、それを壁だと思わず、一つずつ乗り越えることで、次第に自分の力がついていくと思います。
昭和医科大学の実習はすべて附属病院で行われ、実習先に教員が配置されています。学生が安心して実習に臨めるというメリットもありますし、講師である私たちも大学と実習先の両方の様子を見ながらサポートができるので、学生一人ひとりに手厚い指導が可能です。実習中の学生たちは普段とはまた違う真剣な表情をしていて、「こんな一面や能力があったんだ!」と新たな発見につながることも多いです。学年が上がるにつれて学生と関わる時間も増え、成長を感じられるのが何よりのやりがいです。


作業療法士と講師、
忙しくもやりがいを感じられる毎日
大学卒業後は、急性期や回復期のリハビリテーションを行う病院で作業療法士として6年間勤務しました。その間にも技術力向上をめざして講習会に参加していたのですが、次第にデータに基づいた効果的な作業療法をもっと研究したいという気持ちが大きくなり、昭和医科大学の大学院に進学を決めました。大学院在学中に昭和医科大学への就職を紹介され、現在に至ります。
講師としては、作業療法関連の講義を担当するほか、学生の実習管理(計画立案や受け入れなど)をしています。臨床の現場では、1日に15〜18人ほどの患者を担当しています。身体を動かす訓練や日常生活で必要な動作の練習など、リハビリテーションの内容は患者によってさまざまです。他のスタッフとは、会議やカンファレンス、不定期に行われるミーティングなどを通じて、患者の状況や治療方針を共有し、最適なケアを提供できるよう連携を図っています。大学で講義がある日は、大学と病院を行き来することもあります。毎日忙しくしていますが、休みは週2日あり、平日や土日を調整しながらリフレッシュする時間も大切にしています。

作業療法士は生涯かけて挑戦できる仕事
皆さんも仲間になりませんか
作業療法士として大切にしているのは、患者を思いやり、信頼関係を築くこと。不安やもどかしさを抱えている患者は、リハビリテーションに前向きに取り組めないときもあります。その気持ちを受け止め、「この人なら任せられる」と思っていただけるような関わり方を心がけています。ある患者は、病気の辛さから周囲の医療者ともぎくしゃくしてしまうなどの問題を抱えていました。しかし、苦しい気持ちを汲み取り、真摯に関わり続けた結果、少しずつ信頼を寄せていただくことができました。退院時にいただいた感謝の言葉は今でも忘れられません。ケガや障がいから生きがいを失いかけた方が、リハビリテーションを通じて日常生活の動作や身体の機能を取り戻し、自分らしさや生活の喜びを再び感じられるようになる。そして、元気を取り戻して帰っていく姿を見る時が一番嬉しいです。
作業療法士は、人生をかけて打ち込めるやりがいのある仕事です。人を支え、自分も成長できる、魅力にあふれた道だと思います。もし「生涯を通じて挑戦できる仕事を見つけたい」と考えているなら、ぜひこの仕事に挑戦してみてください。
昭和医科大学で学び、実習を通じて成長した先には、いつか一緒に働く日が来るかもしれません。リハビリテーションの現場で働く者としても、教員としても、仲間となる皆さんを心からお待ちしています。
1日のタイムスケジュール
8:30 始業・朝礼ミーティング
朝礼やミーティングで患者の情報共有やスケジュール確認を行います。カルテを基にリハビリテーションの準備をします。
9:00~12:00 午前のリハビリテーション
7〜8人の患者に対応します。リハビリテーションの内容は患者に合わせてさまざまです。
休憩
13:00~17:00 午後のリハビリテーション
9〜10人の患者に対応します。体力を維持しながら、集中力を切らさないことが重要です。
17:00 終業
記録やカルテの整理を行い、その日の業務を締めくくります。会議に参加したり、講義の準備を進めたりすることもあります。
昭和医科大学 保健医療学部 リハビリテーション学科

住所:〒226-8555 神奈川県横浜市緑区十日市場町1865
電話番号:045-985-6500(代表)
募集定員:理学療法学専攻 35名/作業療法学専攻 25名